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2025

11/03

芸術監督日記

2025年10月30日(木)黒崎拓海ピアノリサイタル〜幻影と郷愁〜

黒崎拓海さんのピアノリサイタルを開催いたしました。

コンサートはラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」で始まりましたが、気品漂うパヴァーヌのどこか物悲しい音楽に涙ぐんでいるお客様もいらっしゃいました。

続く「水の戯れ」ではきらめく水の情景が目に浮かぶようで、アンリ・ド・レニエの詩「水にくすぐられて笑う河の神」の通り、聴覚だけでなく視覚的な美しさも感じられるようでした。

ドビュッシーの「映像第二集」は緻密な表現と変化に富んだ柔らかいタッチが魅力的で、ペダルによる響き作りが光る演奏でした。異国情緒あふれ、倍音によって豊かに響く鐘の音の余韻が印象的だった第一曲「葉ずえを渡る鐘の音」、静寂と神秘に満ちた第二曲「そして月は廃寺に落ちる」、そして第三曲「金色の魚」ではまさに金色の魚が水の中を素早く泳ぎ回る様子が目に浮かびました。

休憩後はチャイコフスキーの「四季」より「10月 秋の歌」に始まりました。

黒崎さんが銘楽堂のコンサートで度々取り上げている「四季」の作品たちも、お馴染みになってきました。

哀愁漂う抒情的な作品ですが、作品の題字として添えられた*トルストイ詩から感じられるように、ロシアの晩秋がありありと表現されていました。

*「秋 憐れな庭は落ち葉におおわれている 黄ばんだ木の葉は 風に舞い落ちている」

そしてプログラムはショパンの「英雄ポロネーズ」、リストの「オーベルマンの谷」が続きました。

演奏者によってその「英雄」のイメージや解釈も異なるかと思いますが、サブタイトルの「郷愁」に相応しく、黒崎さんの「英雄ポロネーズ」はショパンの祖国に対する愛国心にあふれているようでした。

そして「オーベルマンの谷」では黒崎さんの得意とするリストの醍醐味が詰まった演奏でした。哲学的な深みや人間の苦悩、そして救済を求める心が感じられ、技巧的な側面だけでなく、思考的で真摯な一面が凝縮されていました。

素晴らしい演奏をご披露くださった黒崎さん、お越しくださいました皆様、本当にありがとうございました!